その夜、私は彼に仕事のことを相談した。
昔働いていた店の人から誘いがあって、そちらの方が仕事が楽なので移りたいということ。その場合、収入が減るぶん借金の完済も風俗を辞めるのも予定より少し先になってしまう、ということを話した。
もう風俗を辞めるはずの日が迫っているのに計画変更先延ばしということで、やはりショックなのか、彼は少し悩んでいるように見えた。
「つまり裏方に回るってこと?」「うん。」「社長さんは信用できるの?ちゃんと約束守ってくれる人?」「大丈夫。」私は彼に、以前その社長の下で働いていたとき随分お世話になったことと、社長の風俗や女のコに対する考え方も話した。
「てゆーか今の店ではるかちゃんは何をやってんの?」仕事に口出ししない彼にしては珍しく突っ込んだ質問で私は一瞬焦った。
今の店は“体に触れ合わない”ということしか話していないので、彼にしてみれば漠然とエロいだけで具体的な想像ができず、今度の店との違いがわからないのかもしれない。
「うーん…だから今は触れ合わない接客っていうか…」「屈辱的なことをしているんだろうって想像はしてるけど。」「……うん。」「もし新しい店に行ったら、そういう思いをしなくてすむの?」「うん。脱いだりもしないし嫌なことは何もないよ。」「だったらそっちの店に変えた方が俺としては嬉しいよ。」そう言われて安心した。
たとえ触れ合わなくたって、あんな仕事は一日でも早く辞めたい。
彼に話す前は「どうせもうすぐ辞めるんだしこのまま頑張れば」なんて言われたらどうしよう…って、そんなこと言わないと思いつつもどこか不安だった。
仕事内容も時間も給与も風俗を辞める時期についても、彼は納得してくれた。
翌日、私は自分が勤めるオナクラのオーナーと店長にすべての事情を話し、店を辞めたいということを申し出た。
そもそもオーナーと店長は『うちの店の女の子達全員、一日も早く風俗から抜けてほしい』という考えなので、私がこういう形で辞めることにも賛成してくれた。そして「二度と戻ってくるなよ」と笑顔で送り出してくれた。
それから、新しい店の社長とスタッフに電話を入れ、仕事を受けることを伝えた。
-144へ続く-
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でも暑いの大好きですし、寒いのも大好きです(^ ^)
男女のプログラムの違いは決定的ですね。
だからこそ風俗産業が成り立つわけですが、近頃はその決定的プログラムが曖昧な男性も女性も多いように思います。
誰にも相談できないというのは、オナクラのオーナーも言ってましたねー。
彼も一人で悩んでいたはずですし、またそれも覚悟の上での付き合いだったはずです。
これも普通ならなかなか経験しない厳しい試練ですね。
目からウロコです!風俗の重しの恩恵。
今まで気付きませんでしたが、言われてみれば確かにそうです。
めちゃめちゃ心当たりあるというか、たしかに今まで経験した恋愛と全然違うんです。良い意味で。
記事を読んだいろいろな方に、彼(ユウ)は「女っぽい」とか「私(はるか)のことを好きすぎる」と言われます。
まぁそうかも…なんて思っていましたが、謎が解けてスッキリしましたし、納得しました。
どうもありがとうございます。