その後すぐに引っ越した。
風俗を辞めた私はただ“こっちの世界に戻ってきた”だけだが、もうそれだけで嬉しくて嬉しくてしょうがない。毎日幸せの絶頂にいるような気分だった。
新生活。
こんな展開は予想外だったが、彼は毎日私を求めた。
いくらなんでもそこまで毎日毎日というのは今までなかったことなので、私が風俗を辞めたことは、私だけでなく彼にとっても大きなことなのだと改めて思った。
彼の行動は日常の性欲とかスキンシップではなく、まるで、私を自分のものと言い聞かせて確認しているような、そして私にもそれを教え込んでいるような…そんな感じがした。
私は私で『毎日そんなことしてたら飽きられるんじゃないか』という不安もあったが、実際抱き合っていると『自分の居場所はここだけなんだ』と確認できて安心感に包まれた。
生活自体はとても忙しい。
本当の意味でケジメをつけるために会わなければならない人もいたし、後始末的な“やるべきこと”があった。
それから彼が「好きなこと何でも自由にやれ」と言ってくれたので、私は自分がやりたいことにどんどん挑戦した。
普通のバイト、日曜大工、女友達と飲み、徹夜でゲーム。
料理の腕をもっと上げたい。音楽をいっぱい聴きたい。
でも“合コンに行きたい”は却下された。
そんな中、学生時代の恩師の訃報が続き、ショックでかなり落ち込んだが、彼は今まで以上に私をいろいろな所に連れ出して気分転換させてくれた。
その後、彼のお母様は再入院し、命の期限を宣告された。
今度ばかりはさすがに二人とも落ち込んだし、お姉さんは「子どもの前じゃ泣けない」と、旦那さんに連れられわざわざこの家に泣きに来た。
涙ポロポロの姉と冷静な(ように見える)弟は、家族が何をすべきか、お母様のこと・今のこと・先のこと・お父様のこと・事務的なこと、いろいろなことを話し合った。
私は涙をこらえながら、黙ってそれを聞いていた。
□ □ □
[2012年9月23日現在]
風俗を辞めてから2ヶ月ちょっと経ちました。
彼と知り合って4年2ヶ月、付き合ってからは3年4ヶ月です。
最近の私は、毎日彼の母親が入院している病院に行って、彼の母親を笑わせることに全精力を注いでいます。彼も頻繁に母親に会いに行っています。
状況が状況なだけに、二人ともいつもどこかに負の感情があるので、私は家の中が暗くならないように笑顔を心がけて元気に暮らしています。
彼も「こういうときこそ楽しいことって必要だろー」という考えなので、時間をみつけてはドライブしたり夜景を見に行ったり公園を散歩したり飲みに行ったり、最近は近場でそういうデートをしています。
この先もいろいろあると思うけど、今は幸せです。
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