『まさか…』
私は車に疎いので遠くからじゃわからないけれど、彼の車に似ている気がした。
ドキドキしながら車種が確認できるギリギリの所まで歩いて行った。
スカイラインクーペ。
さすがにナンバーまでは知らないけれど、あの場所にあの車。
彼に間違いないと思った。
『どうしよう、もうダメだ。逢いたい!』車に近付いて見たが中には誰も乗っていない。
辺りを見回しても彼の姿はどこにもない。
私は彼のことを探した。
こっちの道、あっちの道、コンビニ、ファストフード店、どこにもいない。
ただ彼に一目でも逢いたくて、あちこちを必死に走りまわった。
この街のどこかにいるはずなのに。
なんでいないの? どこで何してるの?
『あっそうだ!…駅だ!』
もしも彼が私に会いにきてくれたのだとしたら、駅にいるかもしれない。
そう思って、私は駅に向かって走った。
彼がいた。
腕組みをして柱に寄りかかり、改札口から出てくる人波を見ている彼の姿があった。
いつからそこにいたの?そんなとこで何やってんの?
私のことを待っててくれてるの?バカじゃないの?
しばらく呼吸を整えながら彼のことを見ていたが、ふと彼がこちらに顔を向け、私に気付いた。彼は露骨に驚いて私の方に歩み寄ってきた。
「どうしたの?」「どうしたのじゃないよ。そっちこそ何やってんのよ。」「どうしても会って話がしたかったから。え、なんでここにいるの?」「タクシーで帰ってきたから。」「それでなんで駅にいるの?」「だってあっちに車が止まってたから、駅にいると思って。」「それでここに来てくれたの?」「……うん。」「そっかー、ありがとう。ずっと会いたかったんだよ。」私だってずっと逢いたかった。
「車の中で話したいんだけどいい?」「いいよ。」やっぱり彼のことを諦めるなんてできない。
彼にまた逢えたことがすごく嬉しかった。
-50へ続く-
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今日はこちらも暖かいです。
昨日がたまたま寒かっただけですが、この温度差に結構やられてしまいます。
教えて下さったブログを拝見しました。
なるほど。ああいうメールが来るんですね。
記事を読む限り、彼はどうやら慣れていないみたいですよね。
彼の驚きと興奮が伝わってくるようです。