「人生狂うよ。」「狂わないよ。」
「言いたいことはわかるけど、俺はそんなにヤワじゃないから。」「甘いよ。」「それはお前の方だよ。俺を甘く見てる。」「お前って言わないでよ。」二人とも口調は穏やかだったが、彼は「甘い」と言われたことにちょっとカチンと来たみたいだった。
私は彼がわざと「お前」と言って私を怒らせようとしたことに苛ついた。
「堂々巡りのケンカはしたくないよ。」「じゃあ納得させるよ。」その自信は一体どこから来るのだろう。
私も相当わがままだが、彼こそ一歩も引かずにいつも我を通す。
「俺はね、はるかちゃんと付き合うことが大変なのはわかってるよ。」「この先絶対、しなくていい苦労をするよ。」「わかってる。」「後悔するよ。」「いや、きちんと付き合わない方が後悔する。」彼が私のことを本気で想ってくれているのはわかっている。
彼が優しくて誠実な人ということもわかっている。
私だって彼のことが好きだもん、本当はずっと一緒にいたい。
「俺がはるかちゃんのことを真剣に考えてもうすぐ一年だよ。」私はドキッとした。
そういえばそうだ。私が彼のことを何とも思っていないときから彼は私のことをずっと考えていてくれたんだ。
私が彼のことを真剣に考え始めたのは、たった3週間前だ。
「自分がどうしたいか、どうすべきか、毎日考えたよ。」「うん。」「今の状況と将来抱えるであろう問題も全部見据えた上で、それでもはるかちゃんと一緒にいたい。それが俺の結論。責任持てるし覚悟もある。」「責任…覚悟…。」「うん。だから俺の彼女になって。」「……うん、わかった。」-79へ続く-
- 関連記事
-
私はあれから『もう少し違う(やさしい)言い方ができなかったかなぁ』と考えたりしたので、石川様がまたいらして下さって安心しました。
どうもありがとうございます。