彼と私はバーには行かずに部屋で飲むことにした。
せっかくきれいな夜景が見える部屋なので、むしろここの方が二人でゆっくりできていいかもしれない。
それよりも私は、彼にお金を使わせすぎていることが気になった。
ワンピースもカーディガンもサンダルもホテル代も、予定になかった余計な出費だ。
私は考え無しに「飲もうよ」と言ってしまったが、それだって彼のオゴリである。バーなど行かずに部屋のビールでも贅沢だ。
「そういえば、引っ越し先ってどこ?それ聞いてなかったよ。」「○○(駅)」「は?俺んちから遠くなってんじゃん。なんで?」「友達の家の近くなの。」「マジか。」彼はおもいっきり嫌な顔をした。
がっかりしたというよりも、どうも解せないといった表情だ。
「知らない所は嫌だしユウくんちの近くに住むのは図々しいと思ったから。」「そんなわけないだろ。てか離れてどうするよ。」「ごめんね。」「そもそも引っ越すならもっと早く言えよー。」そんなことで文句言われるなんて思ってなかったので私もちょっとムッとした。
「義務じゃないけどさ、なんか水臭いよ。」まぁ言われてみれば確かにそうだ。
私が逆の立場だったらやっぱりがっかりすると思う。
それからは、普通に楽しく会話した。
明日はどこへ行こうかとかお昼は何を食べようかとか、他にもいろいろな話をして過ごした。
「そろそろ寝よっか。」彼は窓側のベッドに入ると、テーブルランプを消して代わりにフットライトを付けた。
私は壁側のベッドに潜り込んだ。
『ふーん。一緒に寝ないのか…』
彼と二人で初めて一晩過ごすというのに、この距離感はなんだろう。
-81へ続く-
- 関連記事
-
とにかく安心しました。私も嬉しいです。
それから、とても感動しました。
大抵は造反する者が一人や二人はいるものだし、組織のトップに立つ人間を疎ましく感じて足を引っ張る輩がいるものです。
それなのに、素晴らしい仲間達ですね。
そしてそれ以上に、りちゃあど様の人望がこのような結果に繋がったのだと思います。
うん。よっぽどいい男なんだろうなぁ~(笑)
私も“出会い”に感謝しています。