私は当時、都内の某店舗型ヘルスで働いていた。
この店には女の子の部屋(プレイルーム)は全部で6室あり、完全個室待機制。女の子の在籍数は何十人かわからないが、私が実際によく会って顔見知りとなった女の子は20人程度。よくある普通のヘルスだ。
出勤したら、受付で今日の予約スケジュールを聞き、その日に自分が使いたい部屋を申告する。
事務室(テーブル、椅子、冷蔵庫、ロッカー、連絡事項の張り紙などがある)へ行き、持参した飲み物に名前を書いて冷蔵庫へ入れ、自分のロッカーから仕事道具(スリッパ・服・ボディーソープなど)を持ち出す。そして先ほど自分が受付で申告した部屋に入る。
部屋の中にはダブルベッドとシャワールームがある。清潔で広い部屋だ。
エアコン完備、空気清浄機、テレビ、テーブルランプを乗せた5段ぐらいのチェスト、お客様用の棚とバスケットとハンガーとスリッパが置いてある。
私は着替え終えると、掃除が行き届いているか備品は足りているか等をチェックしながらお客様を迎え入れる準備をする。仕事開始。
私が恋をしたお客様…その人は新規のお客様で、その店に初めて来店し、誰を指名することもなく、店のスタッフがたまたま私を選んでつけた。
私のお客様はほとんどが本指名の常連客だったので、貴重な休憩(待機)時間に飛び込んできた新規の客ははっきり言って面倒だった。
新規の客はもちろん知らない人なので、会うまでは『どんな人だろう?』って心配しながら嫌な緊張感でドキドキする。これも結構ストレス。
当時の私は常連相手にマジで忙しかったので、今思えば『たまたま空いた時間に飛び込んできた新規客』という出会いの時点で、なにか縁があったのかもしれない。
彼の第一印象は、優しそうな人。
「あんまりこういう所って来ないから緊張する」って言いながらも、笑顔で自分からいろいろ話しかけてきて気さくな感じだった。
穏やかで落ち着きのある大人っぽい雰囲気。そこそこモテそうな感じのカッコイイ系。私より5~6歳ぐらい年上かな?背が高くて体は締まっている。ネックレスをしている。ピアスは無し、指輪も無し。爪は伸びていない。汗臭くない。香水無し。Tシャツはよれてない。清潔感あり。腰パンじゃない。お洒落。腕時計は…あっ私の好きなブランドだ。成金じゃないな。
こんな風にいろいろチェックしたのは、べつに彼に興味があったからじゃない。私は風俗嬢として、お客様が部屋に入ってきた瞬間からあらゆることを細かくチェックする。
なるべく早い段階でお客様がどういう人なのかを掴み、そのお客様に対しての"はるかのキャラ"を設定する。お客様からいろいろ質問されたときのために、なるべくそのお客様に好まれるような自分の架空プロフィールを頭の中で作っておくのだ。これだから新規客は面倒くせー。
シャワーのときは、会話をしつつ丁寧に体を洗いながら更に細かくチェックする。
一番はチン○の包茎チェック(仮性・真性)、おへそは綺麗か、髪にフケや脂っぽさはないか、足の爪は伸びていないか、体に傷やアザなどはないか、湿疹はないか、手術の跡はないか、等々。
そういう風に徹底的にチェックするのは、お客様と私がお互い嫌な思いをしないため。気になった点をしっかり頭にインプットすれば、プレイ中にお客様の心や体を傷つけたりしないよう、より心配りできるのだ。
彼の場合は何も問題はなかった。たくましく綺麗な体だった。
立ち居振舞いや言動からは、風俗は初めてじゃなさそうだけど慣れてもいない印象を受けた。清潔そうだしとりあえず悪い人ではなさそうだったので、私は少し緊張がほぐれ安心した。
ベッドでは…
このとき私が働いていたお店はややハード気味のサービスをするヘルスだったので、私はあれやこれやと華麗なる技の数々を披露したんだけど(笑)
彼は「そんなことまでしなくていいよ」と言ってくれて、プレイは途中からは恋人同士のように、彼のリードによる極ノーマルでソフトなものになった。
(ただ「そんなことしなくていいよ」って言うお客様は珍しくないので、それが理由で『このお客様はいい人だわ』なんて思わない。『あらそうなの、ラッキー』って感じ)
彼は顔も体もカッコイイ。爽やかで明るい。
でも風俗嬢である私にとってそれはなんの意味もないことだ。
不潔なお客様よりも清潔なお客様の方が仕事は楽だけど、好きでもない男とアレコレするのは、相手がイケメンだろうが不細工だろうが痩せていようが太っていようが、私が感じる気持ち悪さはいつも100%、変わらない。
彼が帰った後、私はトイレに駆け込んで胃液を吐いた。
後々この彼と私が恋愛関係になる予感など微塵もなかった。
-3へ続く-
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