数日後、出勤した私はその日の午後に彼の予約が入っていることを知った。
「はるかちゃんと外で会いたい。」「それは無理だよ」そんな会話をしたあの日から約3週間が経っていた。
『また来てくれた』そう思うと嬉しい反面、前回気まずい別れ方をしたので『会うのが怖い』という気持ちもあった。
その日の彼はいつもと違っていた。
部屋に入って来るなり持っていたバッグをベッドの上にポンと放り投げ、無言のまま私をそっと抱きしめた。
私は一瞬びっくりしたけれど、そのまま彼に体を預けた。
風俗嬢として本来感じるはずの嫌悪感は、なかった。
何十秒か、もっと長い時間か…ずっと無言のまま、私は彼に抱きしめられて安らぐような不思議な心地良ささえ感じていた。
彼は力を入れ直して、私をぎゅっと強く抱きしめた。彼の想いが伝わってくるようで、私の胸はドキドキした。
彼はしばらくするとそっと体を離して私の手を握り、ベッドの方へと導いた。彼はベッドの上にあぐらをかいて座り、私は向かい合って正座を崩した感じで座った。
「はるかちゃん、会いに来たよ。」彼はやさしく微笑んでそう言った。
私は『今日の彼は何もしない、服を脱ぐ気さえもないんだな』と悟った。
「うん。」それしか言えなかった。
「先週、仕事で奈良に行ってきたんだよ」彼はそう言って、バッグの中から小さな袋を取り出して私に差し出した。
「開けてみて」袋を開けると、中に入っていたのは変な大仏の携帯ストラップだった。
「何これ、全然可愛くないんだけどー。」本当に可愛さのかけらもない『THE大仏!』って感じで笑ってしまった。彼も一緒になって笑っていた。
すごく変なストラップなんだけど、遠く離れた場所で私を気に掛けてくれたんだと思うと素直に嬉しかった。
「どうもありがとう。大事にする。」彼から何かをもらうのは初めてのことだ。
彼はその後、奈良での出来事や友達とお花見をしたことなどを楽しそうに話していた。ただ、いつも決まってするスポーツの話はしなかった。
何から何までいつもと全然違っていた。
-15へ続く-
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コメントありがとうございます。
それは世のお父さん方が聞いたらびっくりするお話でしょう。良いお嬢さんですネ。
私は早くに父を亡くしているのでとても羨ましいです。
AKBはそんなに詳しくないですが、大島優子ちゃんがダントツで一番大好きです!
あと、高城亜樹ちゃんも好みのタイプ(と言うとなんかやらしいですが)、それからまゆゆも好きです。
ワンちゃんも大好きです。チワワもダックスもかわいいですよね。
今はうちには何も居ませんが、小型犬も大型犬も好きだし、もっと言えば大抵の動物は好きです。
動物園に行くのも好きですよ。話しが逸れちゃいましたが(笑)
今日は友達と出掛けていたので、そのときにアイスを食べました。
ちょっと罪の意識も感じますが、さすがに3個は満足感大ですね。
31ではバナナアンドストロベリーとジャモカアーモンドファッジが特にお気に入りです♪