車に戻ると彼はいつもより少し大きめのボリュームで音楽をかけた。
「はるかちゃんは何も気にすることないよ。」「ごめんなさい。それと、どうもありがとう。」
彼は運転中、ずっと黙っていた。
私は迷惑をかけて申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
心の中で、お店での彼とお姉さんの言動ひとつひとつすべてに感謝した。
「あのさ、ごはん食べに行こうと思うんだけど大丈夫?」「でもあんまり食べられないかもしれない。」私は体の痛みは落ち着いたものの、食欲は全然なかった。
「いいよ。でも少しでも食べた方がいいから。お店入ってもいい?」「うん。」彼が連れて行ってくれたのは今夜行くはずだった中華料理店ではなく和食のお店だった。
店の中に入るとレジにいた女性が彼と私を店の一番奥へと案内した。そこは二人には贅沢な広さの個室だった。
彼はたぶんお姉さんに電話したときにこの店の予約も入れたのだろう。
「予定変更させちゃってごめんね。」「俺が勝手に変えたんだからはるかちゃんが謝ることないよ。」彼が飲み物と一品料理を見繕ってオーダーしてくれた。
「無理しないで食べたいものだけ食べればいいよ。」「うん。ありがとう。」「でもだし巻きは絶対食って!俺のイチオシだから。」優しい人だな…
こんな素敵な人が私のことを想ってくれてるなんて、幸せだな。
-72へ続く-
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でも、好きな人には優しくなれると思いますよ(^ ^)