こんな素敵な場所で彼と二人きりで過ごせるなんて最高の気分だった。
「誰もいないの?」「うん。誰もいない。」夜の海はちょっと怖いなとも思った。
波打ち際から少し離れていてもなんとなく飲み込まれてしまいそうだ。
「いつも一人でここに来てたんでしょ?怖くなかった?」「怖くないよ。」彼はテンション上がりまくりの私と違って特に楽しそうな雰囲気もなく、海に向かって遠くの方を見つめていた。
「前はよく週末にここに来てね、はるかちゃんのこと考えてたよ。」「ふーん。」「なんであんな生意気なクソ女がいいのかなーって。」「なかなか冷静な思考ね。」「そう思いながらね、いつか一緒に来たいってずっと思ってた。」「ありがとう。来てよかった。」「よし、車に乗って。飲むぞ!」結構なボリュームで音楽をかけ、ビールで乾杯した。
それから彼は後ろの座席からタオルを取って丸めると、計器類や光っているすべてのランプを塞いでガムテープで留めた。
これで景色に邪魔なものは何もなく、本当に月明かりだけになった。
座席の背もたれを少しだけ倒し、ビールを飲みながら二人でいろいろなことを話した。音楽の話、スポーツの話、家の話。
毎日メールや電話でいろいろ話していても、逢えば話は尽きなかった。
-109へ続く-
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実家にも行かないなぁ(笑)
うーん…それって土地柄でしょうか。
でも、男同士だとそういうことってありますよね。
記事に出てくる彼も同じような境遇かもしれません。彼の場合、父親が望む大学を受験しなかったのですが、それはお父様にとっては許し難いことだったようで。
人の思いは様々ですね。