彼はベッドに腰を下ろして脚を組んだ。
次に彼が発した言葉はあまりにも意外な一言だった。
「脱げよ。」えっ、なんで!? どうしよう…。
「ごめんなさい。」私はよくわからないが反射的に頭を深く下げて謝った。
「早く脱げよ。」風俗嬢はお客様に「脱げ」と言われればなんの抵抗もなく脱ぐ。
恥じらいながら脱ぐのか、挑発的に脱ぐのか、サクサク脱ぐのか、その場の空気に合わせて脱ぎ方も変える。そんなものはお安いご用だ。
でも、彼の命令は違う。プレイじゃない。
お客様が風俗嬢に命令したのではなく、『彼が』『私に』命令したのだ。
どんなに彼が客然とした態度で私を風俗嬢扱いしようとも、心の中では彼は私をそんな風には見ていない。
彼の意図はわからないが、これは『あえて私に惨めな思いをさせる』作戦。
それがわかるから余計に悲しかったし屈辱的だった。
『負けない、自分の感情は殺す、これは仕事』私は自分にそう言い聞かせ、着ていたワンピースを脱いで下着姿になった。
「全部脱いで。」彼は表情を変えず、じっと私を見ていた。
私はブラジャーのストラップに指を掛けた。
でも、そこで動けなくなってしまった。
『この人に、こんなふうにして裸を見られるのは嫌だ!』あろうことか私は『恥ずかしい』と思ってしまったのだ。自分でも驚いた。
裸なんて今まで何度も見せているし、それ以上のこともしてるのに。
『もうこの人にはかなわない…』
だから昨日私は“風俗嬢”という言葉を何度も使っていたのかもしれない。
“風俗嬢”という言葉を盾にして、彼との距離をとるために。
“私は風俗嬢”って自分自身に言い聞かせるために。
でも、もう限界かもしれない。
-24へ続く-
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