この日は東京タワーに夜景を見に行った後、和食のお店に入った。
「はるかちゃん、週末海に行こうよ。金土か土日。2日間。」「それって…泊まりってこと?」「て言うか、夜出発して朝日を見て帰ってくるんだよ。」「なんかすごいね。」
「どう?ちょっと厳しい?」「ううん、大丈夫!」「いつもその海に行くとき必ず寄る中華の店があるから晩飯はそこね。」「うん、いいよ。楽しみだなー。」私達は金曜日の夜に出掛けることにした。
私は金土でも土日でも、どちらでも構わなかった。
どちらにせよ彼氏(と言うか元カレ?)が帰宅する時間は遅いので、私は彼氏に会わずに余裕で家を出ることができる。外泊に関しては親友の家に泊まることにすればいい。
翌日の火曜日から木曜日までの3日間、引っ越しの準備を進めた。
出勤前は荷物を持って引っ越し先のマンションに寄ったり、生活用品を購入して置いてきたりした。電化製品や家具なども、購入自体はこの3日間でほぼ終わらせた。
そして木曜日の夜、彼氏に別れを切り出した。
『別れたい』ということと『数日後にはこの家を出る』ということを伝えたが、
彼氏はもちろん納得しなかった。
最近私の様子が少し変だと感じていたらしいが、別れを考えているとまでは夢にも思わなかったようで、ものすごく驚いていた。
「男が出来たのか」と聞かれたが、それは否定した。
そして「頼むから考え直してくれ」と何度も言われた。
彼氏は怒ったりはせず、ただただショックを受けている様子で今にも泣き出しそうな顔をしていた。
夜中、私はひとりリピングのソファに座って彼氏のことを考えていた。
彼のことを好きになるまでは彼氏とはうまくいっていた。
彼氏のことが嫌いになったわけじゃない。むしろ嫌いならば別れるのも楽だ。
なんの落ち度もない彼氏を裏切って傷つけたことに対して申し訳ない気持ちで、なにかの“情”が胸を締め付けた。
あまりにも自分勝手な話だが、別れを告げた自分もとても悲しかった。
-65へ続く-
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