面接をしてくれた男性は、まず名刺を渡して丁寧に挨拶をしてくれた。
それから私は、履歴書とアンケートの中間のような用紙を渡されてそれに記入した。
内容は、氏名・生年月日・住所・電話番号・身長・体重・スリーサイズ・現在の職業・現在の収入・OKプレイ・NGプレイ・希望金額(目標金額)・刺青や傷跡の有無・その他の条件など。
こういうものを記入するのは慣れている。
AVの面接だけでなく、風俗店の面接でも当たり前に行われていることだ。
ただ、自分にとって未知の世界である“AV”という所に足を踏み入れようとしている、その緊張感があった。
「高橋さんは顔出しNGなんですよね。」「はい。」「顔出しNGは誰でもできるのでギャラが全然違っちゃうんですよ。」「はい。それは承知しています。」「正直言って高橋さんぐらい稼いでるコは向かないと思うんですよ。顔出しNGは稼ぎの少ないコが小遣い稼ぎで出演してるケースが多いので。」面接をしてくれた男性は、いろいろなデータの載った書類を広げてあれこれ丁寧に説明してくれた。
「あぁ、なるほど。こういうことなんですね。」「うーん。月にこれぐらい数こなしても現在の収入と比べると…。」「そうですね。わかりました。」「でも勿体ないですね、どうしても顔出しは無理ですか?」「そうですね。それはどうしても無理なので。」「顔出しOKなら喜んでバックアップさせて頂きますので、気が変わったらいつでも連絡して下さい。」帰りの電車の中、私は窓の外を眺めながら「仕事を辞めさせてやれないのが悔しい」という彼の言葉を思い出していた。
私は彼に頼って風俗を辞めさせてもらおうなんて、これっぽっちも思っていない。自力で稼いで自力で方を付けて自力でまともな生活に戻ってみせる。
今までも頑張ってきたし、これからも頑張る。
でもだからといって、AVがダメならやっぱりヘルス、というわけにはいかない。
どうしたって私にとって彼の存在は大きい。
-104へ続く-
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それ、ニアピンじゃなくて超ビンゴです(汗)