“また好きになったら呼びに来て”だって?
むかつく。どこまで傲慢な男なの!
傷ついたのは私なのになんでユウが逆ギレしてんのよ。
なんで学歴の話から風俗の話にすり替えるのよ。
しかもあんな酷いこと言うなんて信じらんない。
大体ユウはいつも極端すぎる。
貧乏で片親で低学歴の女の気持ちなんてユウにわかるわけない。
たぶん劣等感やコンプレックスなんてひとつも理解できないだろう。
泣きたくなんかないのに涙は止まらない。
なんなのよ、いったい。
風俗嬢と付き合ってるとあんなバカなことも考えるの?
あー、甘かったな。わかってたつもりだったのに。
私も一緒なんだな…。
結局は私もユウくんの気持ちわかってあげられないってこと。
私は泣きすぎて変な呼吸が治まらず、そのうち自分が泣いている理由もよくわからなくなってきた。とりあえず水を飲もうとキッチンに行くと冷蔵庫の前で力尽き座り込んだ。
久しぶりの過換気の発作だった。
両手で鼻と口を覆おうとしたが、前回と違って指を曲げることができなかったのでかなり焦って困惑した。
ペダルビンを何度か蹴飛ばして倒し、散らかったゴミの中からビニール袋をみつけて顔に宛てがった。
「はるかー。人ん家で暴れんなよー。」向こうの部屋から彼の声がした。
それから随分時間が経ったように感じたが、気持ちは落ち着かず呼吸の苦しさも変わらないままだった。
リビングのドアが開く音がした。
「おいおい…」彼はビニール袋を取り上げて放り、私の手を握った。
「ちゃんと意識あるかー?聞こえてたら俺の目を見て。」私は眼球を動かして彼の顔を見た。
頭は少しぼんやりしていたが彼の声ははっきりと聞こえた。前にどこかで聞いた“耳だけは最後まで残る”というのをチラッと思い出した。
「よし、落ち着いていこうな。」私は握られた手で自分の胸を叩いた。
「わかってる。大丈夫だよ。」私は前回とは違い、彼に対して申し訳ないとか有り難うという気持ちを感じる余裕さえないほど苦しかった。
彼は前にも増して落ち着いていた。
-124へ続く-
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『ポップコーンをほおばって』という歌は好きです♪
今日は気持ち切り替えて仕切り直し、頑張りましょうね(^_^)/