「車売ったのって一昨年の房総(海)のすぐ後よね?」「うん。いつから気付いてたの?」「気付いたのはさっき。でもなんでそんなことわざわざ隠すかなぁ。」「実はさ、こっちが売れたら話そうと思ってたんだよ。」そう言って彼は書類を差し出した。
……不動産?登記?名義人?
「俺が前に買ったマンション。今まで人に貸してて時間かかったけど、やっと売却できそうだから。」それを聞いた私はやっとすべてを理解した。
彼が車を売った理由、そのお金を使わずに家の金庫に保管していた理由、マンションを持っていることを話さなかった理由、そのマンションを売ろうとしている理由。
そして、それらのことをなぜ私に隠していたのか。
「ユウくん、全部わかった。とりあえずそのマンション売るのはやめて。」「どうして?」「私の借金そんなにはないから。」彼は黙っていた。
「私の言ってることって見当違い?」「いや…。じゃ、ぶっちゃけあとどれくらい必要?これじゃ足んないよね。」「なに考えてるのよ。身請けのつもり?」「そんなんじゃないよ。」本当は、好きな人が自分のためにここまでしてくれるなんて、有り難いことだし嬉しいことなのかもしれない。
でも私は、彼にそんなことをさせてしまった罪悪感、悔しさ、悲しみ、余計なことをした彼への怒り、そんなやりきれない気持ちでいっぱいだった。
「俺はただ今の仕事を辞めさせたいだけ。でも自分にできるのはこれしか思いつかなかったから。」「だからね、そんなことしてくれなんて頼んでないってば。」あー、私はやっぱり彼の人生を狂わせたんだな。
マンションを売る前に気付いたのがせめてもの救いといえば救いか…。
-132へ続く-
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