「がっかりよ。ユウくんは私の性格もっとわかってると思ってた。」「怒るとも思ったけど、はるかちゃんならわかってくれると思ったから。」「なんでよ。」「大切な人のために身を削る気持ちは誰よりもわかってるはずだから。」「わかんないわよ。」
「じゃあなんで風俗で働いてるの?」「………。」「自分の不始末じゃないし欲のためでもないよね。お母さんのため?育ててくれた御家族のため?どっちにしても大切な人のためだよね。」「それとこれとは事情が違うって。」「同じだよ。大切な人のためならなんでもする。そうだろ?」あーあ。何がどうしてこうなっちゃったんだろう。
とにかく、私が風俗嬢じゃなかったら彼はバカな気を起こさなかっただろうし、多額の現金を前に終わりの見えない話し合いなんてしなかっただろう。
「はるかちゃん、せめてこの金は受け取って。マンションは売らないって約束するから。俺はそこまでなら譲歩する。」「ごめん、私は一歩も譲れない。」ケンカではなく、お互いの立場の違い、考え方の違い。
私にとっては、彼が100%折れてくれないとどうにもならない問題だ。
「どうしてそこまで意地になるんだよ。」「それを受け取るくらいなら、とっくの昔に客から巻き上げてるわよ。」「………。」「そうしなかったのは、私は最低な仕事してるけど人の心につけ込む詐欺師じゃないから。私にとって客はパトロンでも愛人でもカモでもなくてお客様なの。わかる?」「よくわかるよ。」「なのに好きな人の大切なお金になんて、尚更頼れるわけないじゃん。」「いや、俺の金だからこそ頼っていいんだよ。」「違うよ。ユウくんのお金だから余計ダメなの。」彼はしばらく黙って考えていた。
私は自分の意志を曲げるつもりはない。
誰にも頼らず自力で這い上がると決めていたからこそ今日まで頑張ってこれたのだ。
ただ、これから私と彼はどうなってしまうのか…それがだんだん不安になってきた。
-133へ続く-
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何か問題が起こったとき、その瞬間の自分の感情でいっぱいいっぱいにならないよう、冷静にその先を見られるようになりたいです。
私はカウンセラーの器じゃないですが、気が合いそうと言って頂けてとても嬉しいです(^_^)