お風呂から出た彼は、リビングに戻って来るなり、テーブルの上に置いてあった現金やら書類やらを抱えて仕事部屋に行った。
金庫は仕事部屋に置いてあるので、たぶん全部金庫にしまったのだと思う。
それからすぐに彼はリビングに戻ってきたが、私とは少し距離を置いて座った。
私は元の二人の雰囲気に戻りたいけれど、自分の考えは変えられない。
今自分がどうすればいいかわからないし何を話せばいいのかもわからない。
彼が仕事部屋にこもったりベッドに入ったりせず、一応リビングに戻ってきてくれたのは、私と同じようにこの空気を修復したい気持ちがあるから…だと思いたい。
でもなんとも言えない気まずい雰囲気は変わらない。
それにしても私の借金がいくらあるかも知らないのに、車売ったりマンション売ろうとしたり、やることが危なっかしい。
それってなんだか頭悪いし思い込み激しいし。
大体、私、借金があるなんて話したことないよね?
「はるかちゃん明日仕事だよね。先に寝ていいよ。」「うーん。ユウくんは?」「まだ当分起きてるから先寝てて。」「わかった。おやすみ。」と言ってもまだ全然寝る時間じゃない。
ただ単に私を寝室に追いやりたかったのかな。
ん?もしかしてユウくんはリビングのソファで寝るつもり??
まあね、ケンカしている感じではないけれど、かと言って一緒に寝る雰囲気でもないか…。
夜中、何時頃かはわからないが、彼がベッドに入ってきた。(それで私は一瞬目が覚めた)
私は半分寝ぼけながらも『あれ、一緒に寝るんだ…』と思って、なんとなく安心してまたすぐに眠った。
翌朝は、やはりいつもと違う雰囲気だった。
お互い険悪でも不機嫌でもないが、仲良くないしご機嫌でもない。
当たり障りのない会話はするが、楽しくないし笑顔もない。
そして一番、今までと決定的に違ったこと。
私は仕事に出掛けるとき、いつものように彼に「行ってきます」と言ったが、彼はわざと無視した。
それは、私が風俗で働くことへの強い抵抗を示す意思表明だと思った。
彼はたぶん怒ってはいないけど、私を許せないんだと思う。
-135へ続く-
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私だったら真剣に相手したりしませんが、自分が納得いく形で責任だけはとってもらいます。
でも生まれつきのことは仕方ないですよ、それは本人のせいではないのだから。