店では、ガラス越しに客のオナニーを見ながら、そして自分の醜態さらしながら、頭の中では彼のことばかり考えていた。
彼の想い、自分の気持ち、彼のお金、私の仕事。
仕事が終わるといつものように家に帰って夕食の支度をし、いつものようにテレビをつけずに二人で食事をした。
無言ではなく会話はする。
笑顔もなく内容もなく気持ちも入っていない、表面上の薄っぺらい会話。
大ゲンカしている最中の方が、まだお互いの心の距離は近いと思う。
息が詰まるようなそんな生活が5日間続き、私は既に限界を感じていた。
『もうダメかな、私はここを出て行くべき?』それとも…
『あのお金を受け取りさえすれば、前みたく仲良くなれるのかな?』
私は自分が勤めるオナクラのオーナーに今回の件を相談した。
これまでの経緯と現在の状態、私の借金と彼の経済状況なども話した。
「なるほどね。実はうちの奥さん昔ヘルスで働いてて僕は客だったんだよ。」「えっ、そうなんですか!?」「うん。だからよくわかるんだけど、彼氏のしたことは愛情表現だからその金は受け取るべき。この場合好意に甘えることがはるかちゃんの愛情表現だね。」「んー…。でも金額がヤバイですよ。」「そんなの彼氏は最初から覚悟の上で付き合ってんだよ?だからこそ受け取ってやらないと。」オーナーにそう言われて、私は、彼が私と付き合うときに「責任持てるし覚悟もある」と言ったのを思い出してハッとした。
「それとさ、はるかちゃんはいいよ。僕も店長もスタッフ達もいつだって喜んで相談に乗るし力にもなるよ。でもさ、彼氏はどう?」「えっ…。」「彼氏は普段から全部一人で抱えてるはずだよ。はるかちゃんがわかってやらなくてどうするの。」「あー、そうですね。誰にも言えないですしね。」「そうだよ、風俗嬢と付き合うのは大変なんだから。もっとでっかく彼氏を包んであげないと。そしたらはるかちゃん今以上にもっといい女になれるよ。」「はい。ありがとうございます。」オーナーは他にも、いろいろなアドバイスやエールをくれた。
それから、奥様と付き合っていたときの話や結婚したときのゴタゴタなどオーナー自身の話もしてくれた。
大事なことに気付かせてくれたオーナーに感謝し、私は自分の考え方を改めた。
-136へ続く-
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ただ、おばさんがお金を払わないのは理解できないし、その方もなぜ料金を頂かなかったのでしょうか…。
多くの人と関わるお仕事は、楽しいことも多いけれど面倒なことも多いですね。
会社が負担とか個人が負担とか、その業界でそういうシステムになっていたのは全然知らなかったです。
それを考えると、私は子どももいないですし現金しか使わないしお釣りも貰わないので良いお客さんですねぇ(笑)